「東アジアの思想」という話-014

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「東アジアの思想」という話-14

【儒学の国教化】
『易経』の正統が孔子の『論語』です。

・『易経』→『論語』→『孟子』→『荀子』
※他にも『孝経』がありますが、割愛します。

「荀子(彼は法家の権威主義を出自としている)の誤りは、道徳を道具や公共の規範としてしか考えなかったことにある。その反対に、孟子の誤りは、そしてこれは儒家一般の誤りなのだが、政治的な道具について考えるに至らなかったことにある。そのために、孟子は、王が仁であれば天下は平和であると繰り返すしかなかった」
――フランソワ・ジュリアン、中島隆博・志野好伸訳『道徳を基礎づける 孟子VS.カント、ルソー、ニーチェ』(講談社、2002年)P146

荀子の弟子の李斯はその思想を政治に利用しました。

紀元前136年、前漢の武帝は五経博士を置き、儒学(儒教)を国教化しました。「風が草をなびかせるように、君子の徳が小人を教化する」(『論語』「顔淵」)ことにしたのです。

後年、南宋の朱子(しゅし、朱熹(しゅき))(1130年―1200年)によって儒学は、朱子学へと昇華します。朱熹は『礼記』の一編だった『大学』と『中庸』を、『論語』と『孟子』に合わせて四書として、注釈を加えて『四書集注(ししょしっちゅう)』を記しました。

『四書集注』によって、五経より四書が読まれるようになり、二宮尊徳が『大学』を読むことになります。

もっとも、儒学の学派は多様です。朱子学に対して、王陽明の陽明学(ようめいがく)があります。陽明学の学び手としては、幕末の吉田松陰が有名です。

【『老子』の思想的世界-1】
〈もう一つの流れ〉
『易経』のもう一つの流れが老子の『老子』です。

・『易経』→『老子』→『荘子』

『老子』と『荘子』とを合わせて老荘思想と言います。奥深く深遠ですので、玄学(げんがく)とも言います。儒学の経典は四書五経ですが、玄学の経典は『老子』『荘子』『周易』の三玄です。

『周易』は『易経』のことですから、儒学も老荘思想もはじめは一緒です。しかし、儒家と道家は、アブラハムの宗教(キリスト教・イスラム教・ユダヤ教)のように仲が悪いです。

〈道教〉
儒学が、その教学である儒教とそれほど違わないのに対して、老荘思想は、宗教になった道教とはまるで違います。儒教は国教ですが、道教は民間信仰です。

孔子が神格化されたように、老子もまた道教によって神格化され太上老君(たいじょうろうくん)と称されています。

老君は『西遊記』に登場しています。孫悟空は、金丹を盗んで食べてしまった上に、老君の八卦炉を倒して逃げてしまいます。

太上老君を崇めるのが、道士です。イメージとして一番分かりやすいのが殭屍(キョンシー)で有名な映画『霊幻道士』でしょうか。原題は『殭屍先生』です。他にも映画『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』にも、道士が出ていましたね。もっとも、これらの道士像が正しいとは言えないようですが……。

【「沈黙」という話/「東アジアの思想」という話】リスト(16+35+号外1)

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