「東アジアの思想」という話-034

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「東アジアの思想」という話-34

【三教】
三教とは、儒教・仏教・道教です。三教一致を諷する「三教図」という画題になっています。孔子・釈迦・老子が並んで描かれるなど、アブラハムの宗教では考えられない構図です。

ただし、儒教の孔子と仏教の釈迦が、それぞれ教祖だというのは間違いありませんが、道教の老子が教祖というのは、仮託です。

cf.
『「東アジアの思想」という話-14』〈道教〉
儒学が、その教学である儒教とそれほど違わないのに対して、老荘思想は、宗教になった道教とはまるで違います。儒教は国教ですが、道教は民間信仰です。

「東アジアの思想」という話-014

《道教》
道教を体系づけたのは、北魏の寇謙之(こうけんし)(363年―448年)という道士です。霊山である嵩山にこもって二十年あまりで、太上老君の啓示を受けたとされています。太上老君は道教でいう神格化された老子です。

神からの啓示で思い出すのは、イスラム教の開祖ムハンマドでしょう。ムハンマドの場合、出会ったのは、大天使ジブリール(ガブリエル)です。ガブリエルはアブラハムの宗教(キリスト教・イスラム教・ユダヤ教)で、神意を伝える天使です。キリスト教の画題「受胎告知」もガブリエルです。

さて、寇謙之は道教に、仏教の教義を取り入れました。北魏第3代太武帝は、寇謙之を信任し、廃仏を強行しました。

相手の思想を取り入れ、自身の思想を広め深め、その上で相手の思想を否定する――いつものやり方です。

特に、北魏の太武帝、北周の武帝、唐の武宗、後周の世宗の「三武一宗」は仏教を弾圧しました。「三武一宗の法難」です。宗教と迫害はついてまわります。

寇謙之の改革によって、道教は近代に至るまで民間に根強い信仰を得ることになりました。

ただし、仏教が「愛をも捨てよ」と言っているのに対して、道教が語るのは、福禄寿という個人的な幸福です。

・福――子孫繁栄
・禄――地位や名誉や財産
・寿――長寿

特に「寿」は行き過ぎて、権力者は「不老長寿」あるいは「不老不死」を願うようになります。

そういえば、七福神に福禄寿がいますね。寿老人と見分けがつかないと思います。それもそのはず、中国では南極星の化身で同じ神です。七福神については、別の機会にしましょう。

【「沈黙」という話/「東アジアの思想」という話】リスト(16+35+号外1)

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