「第三の視点」による倒叙記述(13)ライティング-4【構成】
【倒叙記述(パラグラフ・ライティング)の構成】
倒叙記述(パラグラフ・ライティング)で、実際に書いてみましょう。
構成は、序論・本論・結論の三つです。
・序論「A=Bなので、(1)(2)の2点を説明します」←一番大切な部分
(序章・イントロダクション)
・本論「(1)はこう、(2)はこうです」
(詳しい説明)
・結論「(1)(2)のことから、A=Bです」
(なくてもいい)
《序論》
序論はそのまま、序章・イントロダクションです。
文章としては一番大切な部分ですから、簡単明瞭に結論を述べます。
変な言い回しや、無駄な装飾は不要です。シンプルにはっきりと書きます。正直それだけ書けたなら、あとはどうでもいいです。その簡単明瞭さのために、苦労する訳ですが……。
「A=Bなので、(1)(2)の2点を説明します」では分かりにくいので、倒叙記述(パラグラフ・ライティング)らしく倒叙小説で説明しましょう。
「Aが被害者を殺した犯人Bであり、動機は(1)で殺害方法は(2)の2点を説明します」
完全なネタバレです。つまり、あとはどのように書こうが意味は通じる訳です。
ですから、善意の第三者が謎解きをしても問題ありません。客観性があるので、そこに探偵=英雄(ヒーロー)がいなくても成立するのです。←これが重要です!
学術論文に、探偵=英雄(ヒーロー)はいません。ただし、「Aが被害者を殺した犯人B」であるために、状況証拠を積み重ねる必要があります。これが証拠資料(エビデンス)です。
その証拠資料(エビデンス)は、「誰かが言っていた」「週刊誌に書いてあった」というあやふやなものではなく、たとえば「防犯カメラのデータ」や「領収書」など、動かしにくい事実の積み重ねから成り立ちます。
『セイレーンⅡ[新装]』では、「A(金髪碧眼の美少年)が被害者(平橋弘行)を殺した犯人B(マスマイヤー)であり、動機は(1)(生命の再分配)で殺害方法は(2)(事故に偽装した生体移植)の2点を説明」しています。
『セイレーンⅡ[新装]』
もっとも、この書籍は続編ですから、読者が前作の『セイレーン』を読んでいれば「誰が犯人か知っている」訳で、そもそもヒロイン「小山田由子も『(平橋弘行が殺されたことを)うすうす感じていた』ことを知っている」訳なのですが……。
繰り返しますが、倒叙記述(パラグラフ・ライティング)は、客観性があるので、そこに探偵=英雄(ヒーロー)がいなくても成立するのです。
どういうことかというと、倒叙記述(パラグラフ・ライティング)では、作者自身が未熟であっても証拠資料(エビデンス)を順番に並べるだけで、それなりの作品にはなるということです。
そうそう自分だけの英雄(ヒーロー)なんて作れません。そもそも、日常で事件がどれだけ起きるでしょうか。一般人が探偵と知り合いになったら、作品の都合上、殺されますよ。#blackjoke
それよりも、簡単明瞭に結論を述べるほうが楽なのです。結果的には、どこにでもいる英雄(ヒーロー)が創造されるでしょうけれど、他者の英雄(ヒーロー)を再現することを目的にしてはいけません。
そうして再現された英雄(ヒーロー)はどこまでいってもコピーであり、創造性がありません。
どれだけ優れた人のものであれ、再現性を目的として利用するのであれば、コモディティ化してしまいます。知の金太郎飴です。『ルパン三世 ルパンVS複製人間』のマモーのように人生を摩耗するだけです。
「不二子……不二子」
これは、作品だけでなく作者も同じことです。今後は、どこにでもいる一般の作者が活躍するでしょうけれど、自分で調べて書かないと、どれも同じになってしまいます。
同じものならば、炎上商法に走るのも分かる気がします。そこに自分がないですから。
この場合の「自分がない」は、客観性からの「自分がない」物化とは別です。
「物化(ぶっか)」は、物の変化です。「明」から見れば、荘周が胡蝶の夢を見ているのと、胡蝶が荘周の夢を見ているのと、あまり変わりません。しかし、渾然一体としているようですが、限定的に自己を顕現しています。
cf.
「東アジアの思想」という話-26
【『荘子』の思想的世界-5】《胡蝶の夢》
《本論》
本論の「(1)はこう、(2)はこうです」という詳しい説明は、好きに書いていいです。
序論で、結論を述べているので、自分の思い描くとおりに書けばいいです。ただし、深夜ラヴレター症候群にならないように。
「自分が好き」と直接書いて伝えるのではなく、証拠資料(エビデンス)を重ねて間接的に伝えることです。
間接的だと伝わらないと思うかもしれませんが、証拠資料(エビデンス)を適切に選ぶだけで十分です。あえて言わないからこそ、伝わります。
証拠資料(エビデンス)をどうやって使うかは、別の機会にしましょう。
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