「東アジアの思想」という話-21
【春秋十二列国-1】
《宋(春秋)》
〈宋の成り立ち/亡国の遺民〉
殷の帝辛(ていしん)には、兄が二人いました。微子啓(びしけい)と微仲衍(びちゅうえん)です。
帝辛は、美女妲己(だっき)に溺れ、政を疎かに「酒池肉林」の毎日でした。非道に溜息をついた周の姫昌は幽閉され、易の卦爻の辞を記します。
溜息は現実となり、国は乱れます。
先に憂う微子啓は、滅びの国と共にすることを選ばず、殷の祖廟(祖先のみたまや)を守るため、封ぜられた微に帰ります。
姫昌(文王)亡きあと、周の武王によって、殷の帝辛・紂王(ちゅうおう)は破れます。
微子啓は周に降伏し、殷の祖廟を継ぐことを願います。許された微子啓は微仲衍と共に、宋(今の河南省商丘市)に封ぜられます。
かつての殷の栄光は見る影もなく、とても小さな国になってしまいました。それは、亡国の遺民として、他国から罵られることを意味していました。
〈守株〉
およそ、国が亡くなる感覚というのは、日本人は想像できませんが、他を笑うことはできます。#blackjoke
中国でも同じことで、宋の人は笑いのネタにされています。法家(ほうか)の韓非(かんぴ)が書いた『韓非子(かんぴし)』の「守株(しゅしゅ)」を紹介しましょう。
「宋の農夫が、ウサギが切株にぶつかって死んだのを見て、それからずっと畑を耕さずに株を見守っていたが、ウサギは二度と得られなかった」
――『韓非子』「五蠧」
「それはないでしょう」レベルで、「考えれば分かる」レベルの前です。しかし、先王朝の古い風習から、そうしたのでしょう。古ければ古いほど、新しい対応ではできないものです。『韓非子』については別の機会にしましょう。
現代の私たちは、誰も天動説を信じていません。もし神秘的な(似非)理由で信じていたとしても、地動説を否定すれば、頭の変な人だと思われます。それがパラダイムシフトというものです。
「守株」という笑い話は、実際に私たちが「株を守る」ように無意味なことをしていることを示唆しているのかもしれません。
そういえば、アメリカンジョークでは、ポーランド人が愚者の役です。
Q.ポーランド人が電球を取り替えるのに、何人必要か?
A.100人。電球を持つのに1人、家を回すのに99人。
現実のポーランド人はけっこう賢いですよ。ニコラウス・コペルニクスやマリ・キュリーがいます。
コペルニクスは地動説ですね。マリ・キュリーを知りませんか? キュリー夫人のことです。
【注意!】各国のジョークは楽しいですが、個人を攻撃してはいけません。くれぐれも注意してください。
悪意には、教養あるブラックジョークを♩ #blackjoke
なお、「守株」は「待ちぼうけ」という歌になっています。
*北原白秋作詞、山田耕筰作曲「待ちぼうけ」
耕さなかった畑はとうとう荒野になってしまいました。
笑われているのは宋人でしょうか、それとも……。
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