「沈黙」という話-7
【世界観】
〈世界地図〉
日本の世界地図は、日本を中心に右(東)にアメリカ大陸、左(西)にユーラシア大陸・アフリカ大陸があります。真ん中は大きな太平洋で、大西洋は二分されています。下(南)は南極がぐるりと描かれています。
知られている地図のほとんどがメルカトル図法でしょう。他にもモルワイデ図法やミラー図法などたくさんあります。変わったところでは、ダイマクション地図があります。三次元の球体である地球を、二次元の地図にするには制約があります。ダイマクション地図は誤差を少なくするために三角形の面を使っています。
『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊の基地の壁にもあるダイマクション地図を作ったのは、〈宇宙船地球号〉という世界観を提唱したバックミンスター・フラーです。〈宇宙船地球号〉については別の機会にしましょう。
誰しも住んでいるところが中心だと考えてしまいがちです。ヨーロッパでは欧州が中心の地図ですし、アメリカではアメリカ大陸が世界の中心でユーラシア大陸が分断されています。さきほどの日本中心の地図とあわせて、それぞれ「三種類の世界観」を表現しています。
中心があれば、当然端っこがあります。ヨーロッパ中心の世界では、日本は一番東――極東です。
紀元前600年ごろのバビロニアの世界地図が残っています。もっとも、正確なのはバビロニアだけでその周囲は未知の世界です。古くからいろいろな地図が作られましたが、知らないものは描けません。1492年にクリストファー・コロンブスが新大陸を発見するまで、地図にアメリカ大陸はありません(!)でした。
〈地球は球体〉
地上は平面で地の果てまで行くと滝になっていて船は落ちてしまう? ――そう考えていた人もいたようですが、古代ギリシアの哲学者アリストテレスは『天体論』で地球は球体だとしています。もっとも地球は宇宙の中心だと考えていましたが……。
同じ天動説の古代ローマの学者クラウディオス・プトレマイオスも地球は球体だと考えていました。もっとも、計算を間違えて小さく見積もっていたので、コロンブスは新大陸をインドだと思っていました。
〈天動説と地動説〉
プトレマイオスの天動説に対して、ニコラウス・コペルニクスの地動説があります。続くガリレオ・ガリレイが裁判にかけられたのに対して、どうしてコペルニクスは裁かれなかったのでしょうか?
理由は単純で1543年に亡くなってから、著書『天球の回転について』が出版されたからです。ジョークです。あまり精度がよくなかったので、取り立てて問題になることもなかったんです。
ジョルダーノ・ブルーノが、コペルニクスの地動説を発展させますが、1600年に異端とされ火刑に処されます。火刑については後述します。
なお、ブルーノが処刑された理由は地動説だけではありませんでした。他にも何やこれや「カトリック教会おかしくない?」と論理的に考えたからです。書物『聖書』=キリスト教の教義ですから、『聖書』を否定すること=異端な訳です。
ガリレイは自説を撤回し火刑を免れますが、異端であるとされました。その後も許されることはなく、1642年に亡くなります。裁判が誤りであるとカトリック教会が認めたのは1992年のことです。そして、2008年にようやくローマ教皇は地動説を公式に認めました。
1633年、ガリレオ・ガリレイ「ぼそぼそ(それでも地球は動く)」
2008年、ローマ教皇「(はっきり)動いていますよ」
それまでカトリック教会では地球は動いていませんでした。ジョークはほどほどに、コペルニクスとブルーノとガリレイの共通項があります。
コペルニクスはカトリック教会司祭でした。ブルーノもカトリック教会のドミニコ会の修道士でした。そして、ガリレイは敬虔なカトリック教会信徒でした。
カトリック教会が変わるのは百年二百年といった長い年月が必要です。確かにカトリック教会の道は殉教者の血で染まっているのでしょうね……。
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