「東アジアの思想」という話-006

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「東アジアの思想」という話-6

【文武】
人の学びとして、文武があります。文は学問・芸術・文学などの文明です。

「文」は象形文字です。土器につけた縄文の模様です。のち、模様は文字となり、生活のかざりである文化などの意味になりました。

武はそのまま武力です。戦い、軍事です。

「武」は会意文字です。「戈(ほこ)+止(あし)」で、戈をもって、歩むさまです。
※『春秋左氏伝』に「戈(か)を止(とど)むるを武となす」とありますが、誤りです。

【孔子】
孔子は、魯(ろ)という国に生まれました。今でいう山東省南西部です。山東省は北京市のちょっと下(南)にあります。

魯の都は曲阜(きょくふ)と言います。孔子の生誕の地だけあって、孔子廟や孔子邸宅があります。孔子廟は全世界にありますが、ここが一番有名です。

「阜」という文字に見覚えはありませんか? 岐阜の「阜」です。「岐」はというと陝西省西部にある岐山(きざん)から、「阜」は曲阜から、織田信長が岐阜と名づけたと言われています。

岐山は、周の古公亶父が遷都した土地です。古公亶父の孫が姫昌(文王)であり、その子武王が西周を開きます。なお、岐山の南に五丈原があり、234年に魏の司馬懿(仲達)との戦いのなか蜀の諸葛孔明が病に没し、「死せる孔明、生ける仲達を走らす」ことになります。

文王の子である周公旦は、兄武王をたすけ紂を滅ぼします。周公旦は文武を修め、礼制を整えました。イコール孔子にとっての最高の聖人です。

その周公旦の子伯禽が封ぜられたのが魯です。孔子が生きていたころ、魯には周の礼制がまだ残っていました。それを孔子がまとめて、学問にしたのが儒学です。教典に四書五経があります。

【四書五経】
《五経(ごきょう)》
〈『易経(えききょう)』〉
〈『書経(しょきょう)』〉
〈『詩経(しきょう)』〉
〈『礼記(らいき)』〉
〈『春秋(しゅんじゅう)』〉

〈『易経』〉
本来の名前は単に『易』や『周易(しゅうえき)』です。易を易(エキ)と読まずに易(イ)と読む説もあります。『易』は三種類あります。夏(か)の『連山(れんざん)』、殷(いん)の『帰蔵(きぞう)』、それに周(しゅう)の『周易』です。『連山』も『帰蔵』も失われてしまったので、いま伝わるのは『周易』だけです。『周易』は「周代の易」や「周(あまね)く易(変化)の書」の意味です。

孔子がとりわけ重要視したのが、『易経』です。繰り返し読んだらしく、『史記』「孔子世家」に「韋編三たび絶つ」と書かれています。韋編(いへん)という綴じ紐(とじひも)が三度も切れるほどだったようです。『易経』については別の機会にしましょう。

〈『書経』〉
政治史・政教の書籍です。日本の元号「昭和」「平成」はこちらが由来です。ちなみに「大正」は『易経』が由来です。

〈『詩経』〉
そのものズバリ詩集です。『聖書』の「詩篇」とは……。

〈『礼記』〉
礼儀に関する書籍です。

〈『春秋』〉
魯国の歴史書です。「春秋三伝」として、三種類の『春秋』の注釈書があります。『春秋左氏伝(さしでん)』が一番有名で、マトモです。『春秋穀梁伝(こくりょうでん)』はチョットアレです。『春秋公羊伝(くようでん)』はムチャクチャアレです。

《四書(ししょ)》
〈『論語(ろんご)』〉
〈『孟子(もうし)』〉
〈『大学(だいがく)』〉
〈『中庸(ちゅうよう)』〉

〈『論語』〉
後述します。

〈『孟子』〉
後述します。

〈『大学』〉
『礼記』の一篇で、政治の話です。明徳・止至善・新民の三綱領と、格物・致知・誠意・正心・修身・斉家・治国・平天下の八条目を説いています。ちなみに、二宮尊徳(にのみやたかのり)(1787年―1856年)の像が読んでいる本が『大学』です。二宮尊徳が元祖「歩きスマホ」だと思っている人は多いですが、実は狩野元信と伝えられる重要文化財『紙本墨画淡彩朱買臣図』が東京国立博物館にあります。朱買臣(しゅばいしん)は前漢の人で、薪を担いで歩きながら書を読んでいたそうです……。人間てホント成長しませんね……。

〈『中庸』〉
こちらも『礼記』の一篇で、倫理の話です。中庸はどっちつかずの中途半端という意味ではなく、常にセンターにいるというムチャクチャ大変なことです。『老子』に似ていますが、別の機会にしましょう。

【参考文献】
*『漢字源』EPWING版(学習研究社、1993年)

【「沈黙」という話/「東アジアの思想」という話】リスト(16+35+号外1)

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