一人三役仕事術〈標準業務(ik式)〉
「もう一人自分がいれば……」
誰しも思うことを仕事で実行してみましょう。
「そんなことが簡単にできるなら苦労はしません!」
ありますよ。知らないだけで、方法ならいくらでもあります。
【1.現在過去未来】
一人三役とは、現在過去未来の自分を上手に使うことです。
「なんだそんなことですか!」
と、思われるでしょうね。でもきちんとできているでしょうか。毎朝ぼーっと出勤して、疲れた顔で帰宅していませんか? 明日の事を思うと気が重くて眠れないときはありませんか?
ぼーっとしないために朝食を食べるとしても、急に食べ始めたら胃もたれして食べられません。ではご飯のかわりにパンにしますか? 試したことがある人は多いと思います。調べてみて、お粥がいいと分かったとしても何日続けられるでしょうか。
結局、習慣にならずに三日坊主になっていることのほうが多いです。それに、身体は正直で食べたくないなら美味しく感じませんから。現代人はカロリー過多なので一食二食抜いても大丈夫かもしれません。ともかく体調管理から始めてみましょう。
次に仕事の段取りを考えてみましょう。
【一般業務】
〈朝〉――ぼーっして昨日の続きをします。昼前ぐらいにペースが戻ります。
〈昼〉――一時中断され、ペースが落ちます。昼食で眠くなります。
〈夕〉――なんとなくノルマをクリアして、帰社します。
ブラック企業でなくてもこんな仕事を続けていればノイローゼになります。気がつけば同僚は自分より役職が上になっていたり、非常識な上司や無能な部下の間で鬱病になったりしても不思議はありません。
では、次の仕事の方法はどうでしょうか。
【標準業務(ik式)】
〈朝〉――昨日の予定メモから簡単な仕事をやりつつ、ペースを戻します。昼からの予定をメモします。
〈昼〉――メモ通りに一時中断した作業を続けます。眠くなれば休憩します。
〈夕〉――予定メモを作って明日に備えます。
やっていることは同じでも充実感は変わります。
「同じことじゃありませんか!」
はたしてそうでしょうか。どこが違いますか? これはすぐに正解できますよね。メモを取っているかどうかです。
「そんなこと誰でもしています!」
では、どこまで自分の一日の仕事を理解しているのでしょうか? 仕事の項目をリスト化した業務マニュアルはどこまで精密ですか?
完璧なマニュアルがあるとしても、一度自分で、箇条書で結構ですからメモに書いてみてください。順番は別にかまいません。時系列を無視してもらっていいですし、重複してもかまいません。後でチェックして並び変えればよいのですから(※1)。
書き上げた箇条書を見てください。どう書かれていますか?
ふつうは「・……、・……、・……」だと思います。別に「a.……、b.……、c.……」や「イ.……、ロ.……、ハ.……」でもかまいません。
では、何個書けたでしょうか。
「えっと……一、二、三……」
そうした書き方ですと、一つ一つ数えることになります。
では、最初から「1.……、2.……、3.……」と書いていればどうでしょう。数えなくてすみます。誰でもできます。
「そんな簡単なこと誰でも知っています!」
たしかにそうです。
誰でも知っていて、誰でもできることです。でも実際に使っていましたか?
こうした細かいことの積み重ねが仕事の質を向上させます。
それに、できていない人を見たら教えたくなりませんか?
「箇条書ってこう書くんですよ」
でも、どうでしょう。
「だからどうしたの?」
といった反応があれば大変です。考えることをやめてしまった人間と仕事をするのはとても手間です。まずは、そうした人はおいて、自分を変えましょう。
現在過去未来の一人三役で仕事をするにしても職場環境が重要になります。
※1.「・・・」や「abc」、「イロハ」もワープロソフトで変換すればすぐに「1.……、2.……、3.……」にしてくれます。
【2.現状認識】
仕事の項目はいくら書けたでしょうか。慣れていないと十個とか二十個でしょうか。頭の中でリスト化している人でも三十~五十個といったところでしょう。八十個まで書けたならかなり優秀です。
実は、平均的な事務職で二百個は確実にあります。会計事務所や税理士事務所など事務のプロフェッショナルで三百個は優に超えます。大手の工場ですと一千個以上あります。
「どうして1/10にしか感じないのですか?」
これは不思議でもなんでもありません。脳が負担にならないように、日常で習慣にしていることを意識させていないからです。会社に行く途中、家の鍵をかけたか忘れてしまって確かめに戻った経験はありませんか? その場合ほとんどがきちんと閉めています。本当に閉め忘れていたら、思い出したりしないものです。
注意する点は、鍵をかけ忘れたかどうかではなく、その状態になった自分は何に気を取られていたか、です。これはご自身が思い出すことで、私たちからどうこう言えませんが、大変なことが直近にあったのではありませんか?
まずは、仕事の項目を精密に一つ一つ書き出してみてください(※2)。新たな発見があると思います。
様式はどのようなものでも問題ありませんが、次の図に示します。
書き終えたら、担当者が問題になっていると思う箇所を「黄色」の蛍光ペンでマークします(※3)。月次など月に一度や、週に一度、半年や一年に一度の項目も書き加えます。思い出して書き足しても大丈夫です。
とても地味な作業ですが、これをしなければ始まりません。必ず行ってください。
なお、こうしたことをする時期ですが、必ず繁忙期に行ってください。閑散期には問題になる作業自体がなかったりしますので仕上げることができないからです。
※2.工場など手を放せない場合は動画を撮影します。
※3.できればお願いして管理者を含む職場の全員に行ってもらいましょう。