「沈黙」という話-11
【ローマ教皇】
カトリック教会で一番偉い人が、ローマ教皇です。英語の“Pope”はギリシア語由来で「父」という意味です。
初代ローマ教皇が聖ペトロです。英語では“Saint Peter”です。「セイント・ピーター」の「セイント」はラテン語の“sanctus”由来で、英語ですと「聖」を意味する“holy”です。聖地・聖域を意味する「サンクチュアリ」のスペルは“sanctuary”です。“-ary”は「…に関係する人(もの・場所)」の意味があります。史村翔原作、池上遼一作画の漫画『サンクチュアリ』がありますね。
「ピーター」は人の名前です。「ペトロ」は、日本のカトリック教会の伝統的な表記です。ラテン語ですと「ペトルス」なのですが、日本では表記がゆれています。なお、英語ではピーターですが、変化したラテン系ではフランス語・ピエール、イタリア語・ピエトロ、スペイン語/ポルトガル語・ペドロとなりますし、スラヴ系のロシア語ですとピョートルです。ピョートル大帝が有名ですね。ゲルマン系のドイツ語/オランダ語ではペーターとなります。キリスト教圏のでは、『聖書』の中の人の名前が多いです。
『アルプスの少女ハイジ』でクララの車椅子を崖に落としたペーター(犯人はコイツです)がどうしてピーターではないかというと、舞台のスイスがドイツ語圏だからです。まま実際のスイスは四か国語なんですけれどね。
※ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の四か国語が公用語です。
ハイジの本名は「高貴な姿」を意味する“Adelheid”で、ハイジはアーデルハイトの後半の愛称です。なお、「高貴な」“Adel”が変化して“Edel”になると、エーデルワイス(高貴な白)という花の名前になります。歌えますよね? ドイツ語から変化し続けると、英語のアリスになります。ルイス・キャロルがどういった思いで『不思議の国のアリス』の主人公の名前を決めたか想像に難(かた)くないです。#joke
日本の表記は「ペトロ」で発音もそのままですが、英語ですと「ピーター」のまま変化しません。『聖書』の話をするときは、弟子の名前などを覚えておいたほうがいいです。
さて、ペトロの本名はシモンと言います。今でいうイスラエルの北のガリラヤ湖で弟アンデレといっしょに漁師をしているときに、イエス・キリストに勧誘されます。
イエス・キリスト「私について来なさい。人間をとる漁師にしてあげましょう」
――「マタイによる福音書」第4章第19節
知らない人について行ってはいけませんと習わなかったようです。#joke
英語では“FOLLOW ME”ですが、ラテン語では“SEQUIMINI ME”です。歌手の堀内孝雄が卒業した桃山学院高等学校の校章に記されています。こちらは日本聖公会系のキリスト教主義学校(ミッション・スクール)です。ニッカウヰスキーの竹鶴政孝もかつて化学教諭(!)として教えていました。
ただし、「我に従え」と言っても、ただ単に「ついて来なさい」とは言っていません。
あなたがたは、自由を得るために召し出されたのです。ただ、この自由を、肉に罪を犯させる機会とせずに、愛によって互いに仕えなさい。
――「ガラテヤの信徒への手紙」第5章第13節
http://www.momoyamagakuin-h.ed.jp/about/intro/mission.html
自由には他者への愛と責任がともないます。「自由」とはひとりひとりの人格と主体性を尊重すること、「愛」とは互いに仕えあいながら他者と共に生きることです。この「自由と愛の精神」は、たんにキリスト教の立場だけではなく、すべての人間が一致しうる普遍的な理念であり、人類共通の目標です。
http://www.momoyamagakuin-h.ed.jp/about/intro/mission.html
自由と責任、権利と義務はどのような社会でも不可欠ですが、キリスト教の信者はけっこうハードなことをやらされます。念仏を唱えるだけで極楽にいける某宗教とは違うのでしょう。#joke
イエス・キリストは、ペトロに〈天国の鍵〉を渡します。――「マタイによる福音書」第16章第19節
カトリック教会では、この〈天国の鍵〉を持つペトロが初代ローマ教皇とされます。〈天国の鍵〉はローマ教皇が継承しています。なお、英語ですと“Keys of the kingdom”です。
映画ではロン・ハワード監督、トム・ハンクス/ユアン・マクレガー主演の『天使と悪魔』(2009年)があります。カトリック教会内部を描いていますが、そんなことある訳ないじゃないですか。#ノーコメント
〈天国の鍵〉の使い方や、キリスト教の天国と地獄については後述しますね。